『エベレスト 神々の山嶺』と『海よりもまだ深く』

共通している出演者は阿部寛だが、演じている役柄は180度違う二本。

 

『エベレスト…』の方は、狂気とも言える情熱を以て、敢えて前人未踏の危険なルートでエベレスト単独登頂を目指す他を寄せ付けない雰囲気を醸し出す孤高の山男。

片や女房に愛想を尽かされ、子どもの養育費も払えないほど貧乏な売れない小説家。ギャンブルにも目がなくて、悪徳探偵社でのアルバイトが主な収入源。独り暮らしの母親の年金まで当てにする、どうしようもない中年男を演じているのが『海よりも…』

とにかく頼りない男の役柄なのだが、どちらの阿部寛が好きかと言われれば、考えるまでもなく『海よりも…』の方である。

阿部寛はやっぱりコミカルな役柄でこそ、彼の持ち味が発揮される、と僕は思っている。

『新参者』の真っ当な刑事役も良かったが、それよりはバチスタシリーズの食えない変人厚労省キャリアとか、『結婚できない男』の捻くれた建築家、『ゴーイング・マイ・ホーム』や『歩いても、歩いても」の頼りなく、ちょっと冴えないお父さんといった役柄で、その存在が映える。『テルマエロマエ』はちょっとやり過ぎの感がある。

『エベレスト 神々の山嶺』では、とにかくあんな極限を超えた苦難や苦痛を乗り越えてまで山を登ろうとする登山家の心理とはいかなるものか、ということを考えざるを得ない。

結局のところは死にに行くようなもの。自分のすぐ隣りに死があるという状況には中毒性があるのだろうか。

当作でも阿部寛は登頂を果たせず、山頂付近の岩陰で凍りつき死ぬことになる。

その他にも風間俊介がパートナーに負担をかけないよう自分でザイルを切って落ちていったりするエピソードも描かれているし、実際にもそういう場面があると聞く。

まさに死と隣り合わせの状況で、それを超えた先に一体何があるのか、僕は見たことがないのでわからないが、敢えて見たいとも思わない。それが「山男にゃ惚れるなよ」の所以か。

あ、岡田准一に触れるの忘れた。